FC2ブログ

スポンサーサイト

------

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

団鬼六□美少年

20130923

20130923美少年

私は陶器のような艶っぽいうなじを浮き立たせているナオミの襟首に手をかけ、ずり下げるようにして内部をのぞきこんだが、途端に、あっと声が出た。〔…〕

乳色に冴えて絹のような光沢を持ったナオミの背筋にあざやかな緋桜の朱彫りが見えたのだ。襟首を直して私の方に向いたナオミの眼は自嘲的に笑っていた。

別れた亭主と一年間、裁判で揉めている内に、男ってなんて意気地なしで、しみったれなんだろうと

カッとなって思い切って背中一面、緋桜の刺青をしたとナオミはいった。

そしたら気持がスカッとして家も土地も全部亭主にやっちまって、私に残ったのはあの店、一軒だけ、それで今日まで頑張ったのよ、とナオミはいうのである。

――「妖花――あるポルノ女優伝」


□美少年 │団鬼六│新潮社│ISBN:9784104178018│1997年05月/文庫版:改題「不貞の季節」│文藝春秋│2011年02月│評価=○

〈キャッチコピー〉
不貞の季節」…貞淑な妻を部下に寝取られた中年男の妄執。「美少年」…若気の至りの稚児趣味と、その無残な結末。「鹿の園」…快楽教に堕ちた男女の、狂宴の一夜。「妖花」…ロマンポルノの女王・谷ナオミの、哀しいほどに潔い半生。倒錯した性を描きながらも、なおも飄逸味を失わない傑作4編。緊縛の文豪が老境にして切り拓いた新境地を見よ。

〈ノート〉
団鬼六の評伝である大崎善生『赦す人』(2012)を読んだとき、「団鬼六はエッセイだけで卒業のつもりが、「不貞の季節」と『真剣師小池重明』だけは読んでおこうと思った」と書き記した。

同書で大崎は、「不貞の季節」を鬼六の後期の代表的傑作短編だと書いている。あの話はほとんどが事実のようなものだと、鬼六は言い、大崎は別れたとはいえ前夫人の性ことをあそこまであからさまに書けるものなのかと感動であったする。しかし前夫人が不倫関係に到り、それが原因で離婚しているのは事実だが、「不貞の季節」に出てくるそのほかは鬼六の巧妙なまるでモザイク画のような創作なのだと気づく。

美少年」、「鹿の園」も同様で、「私=鬼六」が語り手で、私小説のような実際の出来事から入るが、途中からSMの虚構の世界へ展開する。当方、鬼六エッセイのファンだが、鬼六の官能小説、SM小説、ポルノ小説は初めて読んだ。ブログでの引用は差し控える。

もっとも事実っぽいのが「妖花――あるポルノ女優伝」で、1960~70年代にポルノ女優として活躍した谷ナオミを描いたもの。上掲の場面で、♪娘盛りを 渡世にかけて張った体に 緋牡丹燃える♪と唄をうたいだすのだが、「緋桜の朱彫り」は盛り上げるためのフィクションではないかと思われる。

〈読後の一言〉
小説が事実から虚構へ入るように、もしかしたらエッセイも虚構を多く取り込んでいたのではないか。それにしても極上のエッセイを読めなくなって、はや2年。
〈キーワード〉
谷ナオミ 刺青 「不貞の季節」 

〈リンク〉
団鬼六◎死んでたまるか
大崎善生□赦す人


スポンサーサイト

コメント

非公開コメント
プロフィール

koberandom

Author:koberandom
平成引用句辞典FC2ブログへようこそ!

最新記事
カテゴリ
平成引用句辞典2011.10.19~
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR

Pagetop
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。