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高島俊男▼お言葉ですが…(別巻 5)

20121120

2012.11.20お言葉ですが第5巻


2010年(平成22年)11月に、今野勉『鴎外の恋人――120年後の真実』(NHK出版、以下A著と言う)という本が出た。

4ケ月後の2011年3月、六草いちか『鴎外の恋 舞姫エリスの真実』(講談社、以下B著と言う)が出た。


テーマは同じで、森鴎外のベルリン在住時の恋人を追跡したものである。どちらも、鴎外の恋人はこの人、とはっきり指し示している。

両者は別人である。


A著は、1872年12月マグデブルク(ベルリンの西170キロの都市)生れのアンナ・ベルタ・ルイーゼ・ヴィーゲルト。

B著は、1866年9月シュチェチン(ベルリンの北東120キロの都市、現在ポーランド)生れのエリーゼ・マリー・カロリーネ・ヴィーゲルト。

どちらも正しいことは有り得ないから、左の三つのいずれかである。
(1)、A著が正しい。
(2)、B著が正しい。
(3)、どちらでもない。

――「森鴎外のドイツの恋人」




▼お言葉ですが…(別巻 5)│高島俊男│連合出版│ISBN:9784897722689│2012年07月│評価=○

〈キャッチコピー〉
たとえば、女人の女は呉音である。女性の女は漢音である。ところが、「ゆうべ女房がね…」と言った際の女は、呉音でも漢音でもない。無論唐音でもない。まして訓ではない。言葉をめぐる面白エッセイ。漢字の「慣用音」って何だろう?/沖積層、沖積平野、洪積世/森鴎外のドイツの恋人/戦争中の軽井沢/論語と孔子

〈ノート〉
森鴎外がドイツに留学中に恋人がいた。その女性が小説『舞姫』の女主人公エリスのモデルになった、ということは知られていた。そして鷗外の帰国後、鷗外を追って日本に来たドイツ人の女性がその人ではないかといわれている。

本書の著者高島俊男は、今野勉『鴎外の恋人――120年後の真実』の書評を産経新聞にこう書いたという。〈「へたな推理小説よりおもしろい」という言いかたがあるが、これはじょうずな推理小説よりおもしろい。作り話ではないのだから。〉

ところがすぐに六草いちか『鴎外の恋 舞姫エリスの真実』が出て、“ドンデン返しを食ってひっくりかえる”のである。

今野本は、その前の出た植木哲『新説 鴎外の恋人エリス』(2000年新潮社)に準拠したもの。ただし、このアンナ説には弱点が二つあった。横浜へ来た女性は名前が違うし、年齢は15歳だった。ドイツの女は早熟だったし、二人の間で通じる名前を二人で考えた、と今野説。その名前と年齢に納得できず、ベルリン在住の利を生かして調べたのが六草説だ。

高島俊男によると、六草本は「州立、連邦、王立、教会、市立の各公文書館、記念碑資料館、ドイツ船舶博物館、ドイツ移民博物館、ハーパック・ロイド社、生物博物館、聖マリア教会、墓地管理局、国立図書館、フンボルト大学、ベルリン研究所、ベルリン工科大学の各図書館等」を調査したという。そしてエリーゼ・ヴィーゲルトが見つかったのは、プロシャ王室古文書館のコンピューターに入っていた、シュチェチン(現在ポーランド)の聖マリア教会の1866年の洗礼記録である。

さて、当方も今野勉『鴎外の恋人――120年後の真実』について「本書と同時にNHKでそのドキュメントが放送された。120年前の雰囲気を伝える美しい映像だった。本書は活字版として、鴎外の漢詩などを多く引用しながら、鴎外の恋を追う」と書き、“2011年おすすめ本=傑作ノンフィクション・ベスト10”に選んでいる。本書の「森鴎外のドイツの恋人」を読むまでは、おもしろいノンフィクション・ミステリーだった。

〈読後の一言〉
今野勉『鴎外の恋人――120年後の真実』は絶版にするのでしょうか。絶版にするでしょうね。


〈キーワード〉
鴎外 「舞姫」のモデル ドイツの恋人探し

〈リンク〉
今野勉◎鴎外の恋人──120年後の真実


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