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発掘本・再会本100選★原発ジプシー――被曝下請け労働者の記録│堀江邦夫

20121019

2012.10.19原発ジプシー


5メートルくらいの間隔しかない壁と壁に挟まれた狭い場所で20メートルちかくもあるケーブル、それも14本も処理するのだから、まさに悪戦苦闘。〔…〕

マスクの内側が汗で曇り、視界がほとんどきかなくなってきた。うっとうしい。労働者のなかには、その場でマスクを外し、曇った箇所をゴム手で拭き取る者もいた。


マスクを取ってしまえば、まず間違いなく放射性物質を吸いこんでしまう。内部被ばくだ。

しかし、曇ったままのマスクをしていたら、足場板から足を踏みはずし、転落するかもしれない。


被ばくか、転落事故か――どちらかの危険を選び取らなければならない。どちらにしても、「死の影」がまとわりついている。

一時間半ほどで、どうにか完了。この間、エア・ロック前では、第2班の労働者たちが全面マスクをつけたまま、じっと待機していた。
「仕事しているよりシンドかったぜ」
事務所に戻る途中、待機していた一人の青年は、疲れきった表情でこう言っていた。〔…〕

「被ばく線量」=80ミリレム




★原発ジプシー増補改訂版――被曝下請け労働者の記録│堀江邦夫│現代書館│ISBN:9784768456590│2011年05月//初版:ISBN:9784768455128│1979年10月│評価=◎おすすめ

〈キャッチコピー〉
美浜・福島・敦賀で原発下請労働者として働いた著者が体験したものは、放射能に肉体を蝕まれ「被曝者」となって吐き出される棄民労働の全てだった。原発労働者の驚くべき実態を克明に綴った告発ルポルタージュ。

〈ノート〉
“潜入ルポ”といえば、1972年9月から翌年2月まで豊田市のトヨタ自動車で臨時工として働いた鎌田慧『自動車絶望工場』(1974)を思い浮かべる。同じ70年代の1978年9月から翌年4月まで美浜発電所、福島第一原子力発電所、敦賀発電所で孫請け会社の作業員として働いたルポが本書『原発ジプシー』である。

3.11以後同じ福島第一原発で働いた鈴木智彦『ヤクザと原発――福島第一潜入記』(2011)に書かれた職場環境と、30年前の記録である本書の労働実態とはほとんど変わらない。

著者は作業中に左肋骨を骨折する。病院にむかう車のなかで、安全責任者は「労災扱いにすると、労働基準監督署の立入調査があるので、東電に事故のあったことがバレてしまう。治療費は全額会社で負担するし、休養中の日当も面倒みるので」と、労災扱いしないよう処理する。

――「無災害150万時間達成記念」。こう記された木製の塔が、福島原発構内の道路際に誇らしげにたっている。東電のいう「無災害」とは、災害が発生しなかったことではなく、災害が公にならずに済んだこと――ではないのだろうか。(本書)

「放管教育」では、原発と原爆の相違点とか、自然放射線とは、といった説明があるが、「内部被ばく」から肉体を防護するマスクの正しい着用方法といった実用的な説明はない。なお、1ミリレム=10マイクロシーベルト。

孫請けの親方が採用面接をするとき、「雇入時における安全教育調査票」を書かされる。そのなかにこんな質問事項がある。
〈原子力の安全性〉 1安全と思う 2わからない
〈原子力発電所の必要性〉 1作った方が良い 2わからない
〈原子力発電所は地域に有益か〉1有益と思う 2わからない
そこには「危険と思う」、「作らない方が良い」、「無益と思う」という答えが用意されていない。

著者が敦賀で働いていた1979年3月にスリーマイル島原子力発電所事故が起こる。土光敏夫経団連会長の談話。「だからといって、何もがっくりくることはない。むしろ、これ(アメリカの原発事故)を、日本でどんな小さな事故も起こさないために、よい機会にしなければいかん。ああいう事故がないと進歩はないよ」(朝日新聞)

1979年4月14日の日記にこうある。大飯原発とは3.11により国内の全原発が停止して以降に再稼働した最初の原発である。

――午後7時のテレビ・ニュースで、大飯原発の運転停止決定を知る。スリーマイル島原発事故で緊急炉心冷却装置の見直しが必要になったため、事故が起こった原発と同型(加圧水型軽水炉)の大飯原発をストップさせた、と報道していた。

3.11の32年前、著者が福島原発で働いていた1979年3月11日(日)の日記。

――明け方の5時ごろ、地震で目を覚ます。かなり長いあいだ揺れていた。日中は風が吹き荒れ、東北線が一時不通になった。


こうして歴史は繰り返す。

〈読後の一言〉
原発を停止しての定期検査の従事者は800人を越える。そのときの安全標語。「落ちるな、落とすな、触れるな、行くな、燃やすな」。“な”の連続に、労働者の一人が、『仕事をするな』ってのが入ってねえな。


〈キーワード〉
放射性物質 被ばく マスク

〈リンク〉
鈴木智彦▼ヤクザと原発――福島第一潜入記

鎌田慧★自動車絶望工場




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