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森 健▼「つなみ」の子どもたち――作文に書かれなかった物語

20120427

2012.04.27「つなみの子どもたち



そのあと、しろ山体育館の広場に集っていたら、
「ゴゴゴゴゴ。」
と言う地鳴が聞こえました。その時つなみが土けむりをまい上げおそってきました。
そして、ちょう上まで走ってにげました。そしてにげると中につなみを見ました。家から家と火がわたってついに、海にまで火がついていました。

しばらくつなみを見ていてそして、だれかが、
「山に火がついている。」
と言いました。
そのあとに、またもどって体育館の中に入りました。
その夜にやっとパパに会えました。〔…〕

お母さんは、まだ見つかりませんが、かならず見つけて、三人で仲良くくらしたいです。
みんな
がんばりましょう。〔…〕


――大槌町 大槌小学校五年 八幡千代




▼「つなみ」の子どもたち――作文に書かれなかった物語│森 健│文藝春秋│ISBN:9784163746807│2011年12月│評価=◎おすすめ

〈キャッチコピー〉
18万部のベストセラーとなった作文集から生まれた、10の家族の喪失と再生のドキュメント。作文を書いてくれた子どもたちの「その後」。大宅壮一ノンフィクション賞受賞。

〈ノート〉
「文藝春秋」臨時増刊号『「つなみ」 被災地のこども80人の作文集』(2011年 06月)の企画、取材にあたった著者が、「子どもの作文には書いていないことや書けなかったことも多い」と、子どもとその保護者への取材を重ね、“被災後の家族の今”をドキュメントしたもの。

上掲の大槌小学校5年生の作文には、さりげなく「お母さんは、まだ見つかりませんが、かならず見つけて、三人で仲良くくらしたいです」と末尾に書かれている。

8月に作文を受け取ったとき、千代の父親は「うちはまだ家内が見つかってないんです」と言い、「それで、娘が(母のことを)どう書くんだろうと思ったんです。〔…〕「お母さんを絶対に探すという決意は泣けるほどうれしかったし、『負けないぞ』という気持ちの表れだとも思ったし、そんな千代の強い気持ちが伝わりました」。

父親によれば、千代は震災当初は「お母さんはまだかな」「どこだろう」と口にしていたが、日が経つにつれ、次第に母のことは口にしなくなった、という。それにしても「みんな がんばりましょう」という結びは、同じ目にあった友だちへの言葉だろうし、何にもまして自らを励ます言葉だったのだろう。

著者が、宮城県・岩手県沿岸被災地の、幼稚園生から高校生までの80人の作文集を編もうというきっかけは、吉村昭『三陸海岸大津波』だと書いている。吉村のこの本の「子供の眼」という章は、昭和8年3月に起きた昭和の大津波に際して、岩手県田老町(現宮古市)の子どもが書いた作文7編が掲載されている。その一人牧野アイは、当時父と母、祖父、弟、小二と2歳の妹、叔母を失い、「津波残り」となる。そして今回もまた被災する。娘が語る。

「母はこの間6月の頭に90歳になりました。耳も遠いですし、すこしぼんやりすることもあるんです。でも、津波の取材は決して断らないんです。津波を語るのは、母にとって責務のような気持ちがあるんだと思います。それは私たち母の子どもでもそうなんです」

本書に登場する人たちは、「津波常習地」(地理学者山口弥一郎のことば)だったことを日常的にとらえているが、「まさかこれほどの……」という認識の差で明暗が分かれたように思える。

気仙沼中学1年の娘を持つ父親は言う。「いまは朝起きると、家も事業も何もない現実だけがある。朝自殺が多いというのはわかりましたよ」、「夜は酔っ払って頭をぼやかせるけれど、朝は絶望しかない」、「あまりに強い喪失感を味わってしまうと、『よし、もう一回やろう』と口では言うんだけど、前ほどはできないんですよ。がんばれないんだ」。

それにしても著者の「何度も胸がしめつけられた」思いとやさしい視線が共感を呼び、岩手、宮城の子どもや親たちの百人百様の人生をありのままに語る。そして読者にこんな家族がいる限りかならず東北は復興するという思いをもたせてくれる。

〈キーワード〉
津波 大槌町 家族
〈リンク〉
吉村昭◎三陸海岸大津波

河北新報社◎河北新報のいちばん長い日──震災下の地元紙




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